言葉を紡ぐ日々

一生懸命、人生を楽しむ主婦いりのの気になること、好きなこと。がん治療のことや、たまにお役立ち情報なんかも書いてゆきます

砂漠 ~気ままな私の読書感想~

おはようございます、いりの@です。

火曜日からのどをやられてしまったようで、あまり声がでなくなりました(;´・ω・)

 

さて。

 

今日はのど風邪の話ではなく、読書感想。

伊坂幸太郎さんの「砂漠」です。

 入院中に友人が見舞いの品と一緒に持ってきてくれた本で、おそらく、本屋でこの文庫本をみかけたら絶対に自分では購入していないだろうと断言できる厚さでした(笑)

(※本編だけで500ページあります)

 

私は読書はしますが基本的に超ヘタレなので、見た感じが分厚い本はスルーするほうです。

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当初、入院生活が2週間だと伝えていたので、友人が気を利かせて分厚い本を選んでくれたんでしょうね。

 

おかげで、私も初めて伊坂幸太郎さんの作品に触れることができました。

 

ありがとう、心の友よ(*'▽')

 

さて、友人への感謝はここまでにして、軽くネタばれ気味に感想を書きます☆

 

作品の内容は、仙台の大学へ進学した主人公:北村(男ですが、下の名前出てきた記憶がないです…)が、そこで出会った4人の大学生とともに過ごした4年間の日々を駆け足気味に語っている感じです。

 

実家が金持ち(?)でやや軽薄な青年の鳥居、超能力らしきものが使えふんわり系の女の子っぽい南、学内でも飛びぬけた美人設定で怜悧な東堂、物事のとらえ方が独創的で極端に熱中する青年の西嶋。

 

特に西嶋の語り口調が独創的で、また主人公も含めた全員がキャラクターの個性を強調している感じを受けたので、読み始めた当初はライトノベルなのかと思いました。

 

ですが、そのおかげで読みやすくておもしろいです。

 

逆に言えば、キャラとしての個性が際立っていないと、このお話は「ダラダラとした大学生活で起こったいくつかの事件を書いた小説」となってしまう危険性もあるなぁと読んでいて思いました。

 

ダラけてしまいそうになる部分を、キャラクターたちが引っ張っている。

 

やっぱりキャラ立ては重要だと読後、改めて感じました。

 

大学生のイベントとして必ずありそうな合コンから始まった事件から、巷を賑わせている「プレジデントマン(西嶋が命名)」と呼ばれる通り魔も絡め、強盗団との対峙やその挫折、そこに絡む友情、そして強盗団とプレジデントマンとの最終対決など、4年間を通じて描かれてあります。

 

冷静に考えて、大学生活を普通に送っていたら、強盗団や通り魔とひと悶着あるなんてそうそうあるはずないのですが、そこはソレ、物語の醍醐味です。

 

普通に考えたら、大学生活なんて友達たちと部活やサークル活動したり、合コンに参加したり、ときに真剣に学んだり、バイトに明け暮れたり、恋愛や彼氏彼女との交際で悩んだり、学園祭に参加してバテたり……とかで終了すると思いますしね。

 

好んで犯罪組織に立ち向かっていくという設定でない限りは、犯罪に巻き込まれたら被害者となって泣き寝入りが普通でしょう。

 

その「被害者となって泣き寝入り」の部分になるかと思いますが、作中で鳥居という青年が人生を左右するほどの大けがを負う羽目に陥ります。

 

危険を承知で事件に首を突っ込んだ代償ではありますが、まだ20歳そこそこの青年たちには衝撃的な代償です。

 

彼らの本当の友情の繋がり具合によっては疎遠になる可能性もありますし、もし友情が続いたとしても、決して消えないトラウマとなるはずです。

 

それでも、その「泣き寝入り」の部分を泣き寝入りだけで終わらせないラストと、そのために作中に張られていた伏線に「おお」と感動しました。

 

大学生という設定の、若さゆえの行動力だとも思えます。

 

30代、もしくは40代に入って作中ほどの大けがを味わったら、二度と同じ事件には近づこうとは思わないでしょうね。

(※性格にもよるかもしれませんが、年齢があがるに従って行動できなくなると思うので……)

 

作品中、もっとも疑問を感じたのが、南という愛らしい女の子が使えるという「超能力」です。

 

なぜストーリーのなかに超能力を入れたのだろうかと不思議に感じました。

 

それはあとがきのなかで伊坂さん自身が語っておられまして、読んでみて「なるほど」とは感じましたが、やはり最後まで不思議さは拭えなかった気がします。

 

ただ、それが嫌味になることなく、無駄な設定になることもなく、ストーリーの一部としてキチンと溶け込んで生かされている。

 

たとえば、レモンティーにはレモンが、シナモンティーにきちんとシナモンスティックが入っているような、ごく自然な感じのスパイスとして嫌味なくまとまっているんですよね。

 

無ければ無いでストーリー的には大丈夫そうだけど、スパイスとしてあってもいいような、でもあったらあったで軽く美味しさが増すよね、みたいな感覚です。

 

もちろん、超能力の設定もラストで輝いています。

 

伊坂さんのストーリー構成の上手さにうなりました。

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この作品は、2005年12月に実業之日本社文庫から、2008年8月にJノベル・コレクション、2010年7月に新潮文庫で刊行され、また新たに実業之日本社文庫から文庫として刊行されている、人気の高い作品のようです。

 

そして、作者である伊坂幸太郎さん自身の書きおろし「あとがき」が掲載されているのは、この文庫版のみだそう。

 

その伊坂さん自身のあとがきに「作品のなかで「砂漠」が一番好きです」と挙げられることが多いそうで、なるほど、この刊行履歴にはうなずけるものがあります。

 

私は小説で伊坂作品に触れるのはこの「砂漠」が初めてなのですが、他の作品を読んでみた後で好きな伊坂作品を考えたとき、もしかしたら一番好きな作品は「砂漠」になるかもしれません。

 

私もこの作品が好きになりました。

 

私は最終学歴が高卒なので大学生活の楽しさがわかりませんが、もしかして大学へ行っていたら私もこんなふうに過ごしていたかもしれない、そんな思いを馳せることができた作品です。

 

あ、作中で極端に熱中する男:西嶋が冒頭の新入生歓迎会で「砂漠に雪を降らせるんですよ」とか演説するのですが、作者である伊坂さん自身は発言のなかに大きな意味はなく、できそうにないことを西嶋に言わせたかっただけなのだとか。

 

ですが世の中おもしろいもので、2016年12月にサハラ砂漠で降雪が記録されたらしく、この作品が初めて刊行されたのが2005年になりますから、西嶋の発言は期せずして成ったということになります。

 

人生ってなにが起こるかわからないものですね。

 

さて、超能力というスパイスが混じった大学生たちの物語。

 

おもしろいので時間がある方は、ぜひ読んでみてくださいね^^

砂漠 (新潮文庫)

 

砂漠 (実業之日本社文庫) [ 伊坂幸太郎 ]


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